小型合併処理浄化槽の使い方

トイレットペーパーの特徴
一、浄化槽とは

 浄化槽は、微生物によってし尿、及び生活雑排水を処理して、きれいな水に戻し、河川などに放流する為の物です。このように浄化槽により処理された水は河川に放流されます。
 浄化槽とは、いつでも自動で水をきれいにする「魔法の槽」ではなく。微生物を利用した水処理であり、日常の不適切な使用方法や維持管理を怠る事で容易に浄化能力が低下してしまいます。つまり、未管理のまま使用を続ければ、未処理水の流出や汚泥の流出を引き起こし、水路を汚し、悪臭の発生原因となり、ひいては河川・環境汚染の原因となります。
 この為、環境問題、環境保全への関心が高まっている現在、汚水をより高度に処理する為に維持管理する事の必要性と、浄化槽をより効果的に運用する高度な知識が必要となってきています。
二、単独・合併 浄化槽

1、浄化槽には、トイレの排水のみを処理する単独浄化槽(みなし浄化槽)とトイレの他、台所や風呂など、屋内から出る排水を処理する合併浄化槽があります。
 しかし、今現在では(2010年現在)、「浄化槽」とだけ言えば基本的に合併浄化槽の事であり、宅内で使用する全ての水(屋外に設置されている外水道は除く)が処理される槽の事を指します。
 また、平成13年4月以降からは浄化槽を設置する場合は合併浄化槽の設置が義務化されたほか、既設の単独浄化槽の設置者に対しても合併処理浄化槽への転換努力が規定されました。(自治体、地域によっては、転換の際に補助金が出る場合があります。)
2、なぜ単独浄化槽が「みなし浄化槽」になったのか?

 前述の説明に出ているとおり単独浄化槽とは、トイレ排水のみの処理を行う浄化槽です。この為、トイレ排水以外の生活雑排水(風呂、台所、洗濯など)に関しては未処理のまま河川に排水しています。
 生活排水の1人1日当たりのBOD負荷量は40gと言われています。そのうち、トイレからの汚れが13g、台所・風呂・洗濯など生活雑排水の汚れが27gです。
 単独浄化槽の処理性能はBOD除去率65%以上なので、トイレの汚れが13gから5gに減ります。しかし、生活雑排水の汚れはそのままなので27g、合わせると32gになってしまいます。40gが32gしか減っていない事から、実質的なBOD除去率はたったの20%ということになります。
 一方、合併浄化槽の性能は、BOD除去率90%以上なので、トイレと生活雑排水を合わせた40gが4gに減ります。この為、単独浄化槽と比べるとBOD除去率は8倍となります。
 この様に合併浄化槽と比べると全体的な汚水処理能力が低い単独浄化槽は法令上、廃止の方向性にあり、いわゆる「みなし浄化槽」といわれるのです。
 ただし、この数値は維持管理を行い、適正な使用法である事が前提となります。
三、維持管理の流れ(合併浄化槽)

T、透視度

 透視度とは、メスシリンダーの底に二重線の十字が描かれている、「透視度計」を使用し、水の透明度や色を確認する作業です。これを槽内各室別の透視度を確認する事により大まかな現状把握を行う事が出来ます(写真参照@〜C)。また、この透視度は後述する「BOD」と、ある程度の相関関係にあります。
 透視度計の長さは様々ですが、一般家庭で使用される浄化槽では30cmのものを使用しています。また、放流水の透視度が下から10cm以下(10度以下)の透視度になることは清掃時期到来の目安のひとつになります。
写真@ 写真A 写真B 写真C
Ex、BODとは

 BODとはBiochemical Oxygen Demandの略称で、河川水や工場排水中の汚染物質(有機物)が微生物によって無機化あるいはガス化されるときに必要とされる酸素量のことで単位は一般的にmg/g(ppm)で表わします。この数値が大きくなれば,水質が汚濁していることを意味します。つまり、透視度が高ければ(透明に近ければ)、水質の汚濁は少ないという事になります。すなわちBODと透視度の関係は反比例となります。そのため、簡易な水処理判定の目安となるのです。ちなみに、BODは20℃で5日間で消費された溶存酵素量を計測するものです。
U、各機器による測定

 透視度に合わせて水質の状況をさらに詳しく調べる為「pHメーター」、「DOメーター」、「汚泥界面測定」、「亜硝酸反応」、「残留塩素」などの計器を使用し、測定を行います。
@ pHメーター(写真Dの右側の機械)

 pHメーターとは、水の酸性、塩基(アルカリ)性を測定する装置です。
すなわち、試料(処理水、放流水)が酸性であるか塩基(アルカリ)性であるかを計測し、処理工程が正しく行われているかを確認します。数値は1〜14の間で変動し1に近い数値であれば酸性。14に近い数値であれば塩基(アルカリ)性。7を中心に5.8〜8.6が中性となります。浄化槽内は基本的に7前後の数値で変動している状況が好ましい状態です。
写真D
右側の機械
A DOメーター(写真Dの左側の機械)

 DOメーターとは、水中にある酸素(溶存酸素)量を量る装置です。
 このDOメーターは、ばっ気槽内(ばっ気槽とは槽の下方から多量の空気を送る事で、微生物に酸素を与え、かつ撹拌作用を得る槽です。)の水中にある酸素の量を計測します。これにより酸素が微生物に過不足なく供給され、かつ、消費されているか否かを計測します。
写真E
DOを計測中
B 汚泥界面測定(写真F)

 嫌気(脱窒)濾床槽1、2室と最終沈殿槽のスカム、汚泥の量を計測します。汚泥の溜まりによる清掃時期の測定と一度に大きな流入があり、スカム、汚泥が槽の後半に入っていないかを確認します。スカム、汚泥の量によって清掃時期が左右され、多ければ浄化槽の清掃が必要となります。また、最終沈殿槽にスカムや汚泥が溜まりすぎると、放流先に汚泥が流出するおそれがあり、ひいては河川、環境の汚染原因になります。この為スカムや汚泥が多い場合は嫌気濾床槽1室に移送するか(写真参照G)、引き抜き清掃を行います。
写真F
汚泥界面測定中
写真G
汚泥移送
C 亜硝酸反応

 ばっ気槽内でアンモニアを含む物質が微生物による反応により、硝酸性窒素や亜硝酸性窒素に変化しているかを確認するための測定です。この反応が起こる事によりpHが低下します。また、槽内に前述の嫌気→好気→嫌気という水の循環(返送)を作る事により脱窒(窒素の除去)反応を起こし、さらに汚水を浄化させる事が出来ます。(こちらの反応ではpHは逆に高くなります。)
D 残留塩素(消毒薬)

 処理を終えた処理水を消毒する為の物です。すなわち、浄化槽の放流水は、河川に放流されるので、処理水に含まれる大腸菌などの菌を殺菌し、処理水を安全に河川に放流する為になくてはならないものです。残留塩素濃度を測る事で消毒薬がきちんと作用しているかを計測します。適正に使用、管理されている浄化槽では大腸菌等はある程度減りますが、消毒剤は安全のための最後の砦と言える為、消毒剤を切らせる事は出来ないのです。(写真J)
写真J
4、処理方法

活性汚泥の場合

活性汚泥の沈降性を見るためのSV計
    ↓
ばっ気槽混合液を30分間沈殿させた時の汚泥沈殿率をSVという(写真J)
写真J
計測開始時
写真J
30分後の計測時
(一)活性汚泥法

 活性汚泥は細菌、原生動物、後生動物など多様な生物の集まっている(フロック)集合体です。これら微生物が汚水を酸化分解または吸収分離することで汚水を浄化するものです。
活性汚泥法は生物膜法と違い調整、管理や汚泥コントロールが難しく、常に一定量の汚水流入がないとすぐに不調になってしまいます。この為、一般家庭の合併浄化槽ではほとんど使われていない方式です。ですが、単独浄化槽でブロワーモーターが使用される(強制的空気の送風による微生物への酸素供給と撹拌作用のため)ようになった初期型の全ばっ気式や分離ばっ気式などでは、この方法を用いています。今現在この活性汚泥法が使用されている浄化槽は500人槽を超えるような大型浄化槽に多く見られます。
 この方法を発展させた膜分離活性汚泥法というものがあります。こちらは家庭用浄化槽にも使用されています。
(二)生物膜法

@、生物膜とは活性汚泥のように水中に常に浮遊している状態ではなく、接触材の表面上で好気性の細菌類が膜状に付着している生物群の事です。汚水処理能力の向上や活性汚泥では保持できない増殖速度の遅い(増殖しにくい)硝化菌も保持されやすい特徴があります。ただし、生物膜が繁殖しすぎると、接触ろ材の間に嫌気性菌が多くなり、臭気の発生や汚水処理能力の低下が起こるので、定期的に逆洗を行い生物膜を剥離させる必要があります(写真参照Kイ、ロ、ハ)。活性汚泥法に比べて維持管理は容易です。この為、ほとんどの浄化槽に使われている方式です。
写真Kイ
(イ)常時ばっ気の状況
写真Kロ
(ロ)接触材に付着していた生物膜を剥離させた状況
写真Kハ
(ハ)弊社では剥離後の分離した生物膜を凝集させて処理を行った後の状況
A、生物の多様化による汚泥発生量の低減

 膜がある程度繁殖してくると、酸素の届かない嫌気部が出来るため嫌気性菌が繁殖します。この為、生物循環(食物連鎖)が起こり、活性汚泥よりも汚泥発生量が少なくなるのも生物膜法のメリットといえます。
(三)担体ろ床法(担体ろ床生物ろ過方式)法

 最近の担体ろ床式浄化槽は、前述の活性汚泥法と生物膜法の両方の利点を利用して水処理を行う方式です。
 以前の浄化槽と比べ、全体的な容量が小さいのが特徴です。設置場所の縮小化や、浄化槽の本体価格と工事料金の低価格化のためですが、浄化槽は微生物の力によって汚水を処理するので、ある程度の滞留時間と場所、容量(大きさ)が必要となります。この為、担体ろ床を使いばっ気槽を小さくした分の微生物量を確保し、さらにばっ気槽の後に生物ろ過槽をつける事によって処理能力を確保しています。
 しかし、これによってブロワーの仕様変更(タイマーによる自動逆洗切り替え装置の付いた二本口)によるコストアップや、二つの方式の欠点が同時に出るための処理能力の著しい低下。これに伴って、ろ過槽の閉塞や臭気の発生、ひいては汚泥流出もしくは不完全な処理水流出の可能性があります。
そのため、この方式では適正な浄化槽の使用法(日常の生活様式、ex.塩素系の洗剤使用を控える、温泉の元を入れない、微生物によって処理困難なもの、オムツ、生理用品等は流さない)が必要であり、また、良好・適正な維持管理がより必要となります。
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